初めて、豚汁を作った。


あのひとは、それを食べながら、こう言った。


「俺、豚汁好いとるっちゃんね」


まさか、あのひとに私の手料理を

食べてもらいたかったとか、

夢見てた訳じゃなかったけど、

やはり嬉しかった。


そして、海辺のライヴで、ふと

通りすがりに頭をくしゃくしゃっとして、

一声かけてくれた。


その後、きっと変な顔をしてたと思う。


それから、私はひとりで居た。


そしたら、たまたま私を構ってくれた男性が

その後、恐ろしい悪夢を見させられることになる

男性になるとは、思ってもいなかった・・・。


まあ、彼でなくても私に優しくしてくれるひとだったら、

誰でも良かったのだ。


ただ、それだけだったのに、どうして、

一年後の今、互いに互いを憎悪しあい、

ののしりあってるんだろう?


しかし。

それはどうでもいいことだ。

今となっては。


ただただ、私はあのひとのことを本当に

本当に、憧れていたのだ。


あのひとと少しでも、話が出来れば、

それだけで、最高の幸福感を感じられた。


その反面、会えないときの孤独感や淋しさは、

ひりひりとしみるように痛かった。


痛くて痛くて、もう、我慢しきれず、

あのひとのところに向かっていた。


あのひとは、そんなあからさまな

私の行動に対して、ただこの状態を

ずっと保たせたい、でないともう

会えなくなってしまうと、やわらかく

私を思いとどまらせてくれていたような

気がする。


一年、経った今、あの頃のあのひとは、

ここにはいない。


それでも、私は一年前と同じ気持ちで居て、

やはりあの時と同じように、

ひりひりとしみるように痛かった・・・。