「もう!遅すぎるのよっ!」

 と、憤懣やる方ないと言った

顔つきで、その女性のお客様は、

レジを担当した私を睨みつけながら、

言い放った。


「え?あ。すいません。

今、持って行きますので・・・・・・」


 と、ランチのデザートを指示しながら、

言ってみたが、


「大体、この店は何でも遅すぎるのよっ!

愛想も悪いっ!」


「あ。ほんとですか?すいません・・・・・・」


 と、私は何度か平謝りしたが、その女性の

お客様は、「ぷんぷん!」と言う吹き出しを

周辺に撒き散らしながら、帰って行かれた。


「ねぇ?さっき帰ったお客さんに、何か

言われんかった?」


 と、Aさんに尋ねてみた。


「言われましたよぉ。連れの男のひととか、

目ぇ血走らせて、怒ってましたよ」


「やっぱりねぇ。でも、ひとってお腹が

空いてるだけで、ああも本性むき出しに

なるんやねぇ・・・・・・」


「ほんと、頭悪すぎですよ」


 Aさんの思いも寄らぬ答えに、

笑いがこみ上げてきた。


「ふっ。そう思えば、気にならんくなるね」

 

 これは、私が勤務しているレストランでの

出来事だった。その日の昼は、忙しくて、

行き届かなかったテーブルがあった上に、

店一番、愛想が悪いBさんが接客したのが、

そのお客様の火に油を注いでしまったらしい。


「ああ。たまたま、私がレジを担当して

しまったばかりに・・・・・・」


 と、嘆きながら、私は笑っていた。

あんな風に人まで怒ったりしないでおこうと。

 ちなみにBさんへ。真面目なのはいいけど、

最低限の接客はしようねと言いたかったけれど、

いえない小心者の私であった。