「世界は、壊れそうになった

流星のような雨の中 

身体で身体を強く結びました

夜の叫び、生命のスタッカート

土の中で待て 命の球根よ

悲しいだけ根を増やせ」


 この歌詞は、イエローモンキーと

言うバンドの「球根」の中から、

一部抜粋したものである。その曲が

発売された当時、私は文字通り、

壊れそうになっていた。精神的にである。


今の仕事、辞めようか?続けようか?

はてさて、どっちにする?と、深い深い

渓谷の間で、行ったりきたりしていた。

どっぷりと、暗い、とても暗い闇の中で。


祖母は、呆れてこう言った。

「ココロコロコロとは、よく言ったもんやね。

いい加減にせんね」

 妹は、こんこんと、

「ひとにはね、向き、不向きって言うのが、

あるとよ」

 と、どちらかと言えば、辞めた方が良いと、

暗にほのめかしてくれていた。上司は、

「もう少し、頑張れないかな?」

 と、言っていた。あー!もう、どうしたら

いいか、分からん!と、叫ぶ私だった。


そこで、私は、

「考える時間を、二週間下さい」

 などと、体裁の良い条件で、その間、

遊びまわった。長崎へは、ランタン祭りと

蛇踊りを観光しに行ったし、動植物園へは

写真を撮りに行って見たりした。

一応、辞めるか続けるのか、どちらかに

転がってくれないものかと、思ってのことでもあった。


 でも、結局、その会社は辞めた。ちなみに、

その会社は生命保険会社だった。

ただでさえ、人見知りの激しい私に

勤まるはずはなかったのだ。

 それから、すっかり気の抜けた私は、

妹のアパートに転がり込んで、

流れて行くばかりの罪悪感に、苛まれながら。

 そんなある日。イエローモンキーの

ファンクラブから、東京でライヴが行われるとの

DMが届いた。初めは、こんな無職でぶらぶら

してる私に、行く資格なんてないと諦めていた。


 が、一日、二日と経つ内に、ムクムクと「やっぱり、

行きたい」と言う気持ちで一杯になってしまった。

幸いなことに、そのライヴのチケットの取り方は、

チケット専用の電話番号に電話して、予約ナンバーを

控えておき、(それも何度かけてもよいと言う条件だった)

後日、当選していれば、行けると言う訳だ。

そこで、私は二百回、予約を取ろうと決めて、取り組んだ。

が、百七十五回目で、頭が朦朧としてきて、もうこれだけ、

すれば、一枚くらい当選してるだろうと、やっと、

気も済んだ。


 結果、チケットは五枚当選していた。

仕事は、以前、勤めていたレストランで、

雇ってもらうことにしてもらった。後はライヴに

日を待つだけとなった。


 そして、ライヴ当日。

「・・・・・・身体で身体を強く結びました。

永遠の中に生命のスタッカート 土の

中で待て 

命の球根よ 魂に、さぁ根を増やせ 

咲け 花 花 花・・・・・・」


 立ち尽くした私の身体は、わなわなと

震え、びりびりと電流が走り、涙が

とめどなく流れて行った。